知夫村役場地域振興課 情報発信室

知夫里島未来の担い手 Vol.1

 

知夫里水産株式会社 代表取締役社長 佐藤(さとう)()()()さん

 表紙

 

 今年6月末に完成する「知夫村水産加工冷凍施設」は、最新の加工設備を導入した水産加工場です。知夫村漁業者の高齢化や後継者不足など水産業の衰退が著しい現状を打破し、村民の所得向上による漁業の活性化と第6次産業への波及効果を図るために計画された村の一大事業です。

この施設の指定管理者となり、7月から稼働を開始する知夫里水産株式会社は、令和29月、知夫村に設立された新会社です。漁業者とタッグを組み、海産物の加工、島外へ販路を拡大するために「知夫里島オリジナルブランド」を作りたいと語る40代の元気一杯な社長 佐藤日呂登さん。

さて、どのような商品をどのようにして売るのか?島の人は皆、興味津々です。住民の関心が集まる加工場の中身とその想いについてお話を聞きました。

 

郡湾

 

 

■知夫里島を知ったきっかけは何ですか

4年前のことです。当時、私は山口県にある松浦商店という燻製や水産加工品を扱っている会社で、商品開発や販路を拡大するための業務を行なっていました。その会社に岩牡蠣の視察依頼があり、開発チームの一員として、初めて知夫里島を訪れました。

しかし、残念なことに、その時の岩牡蠣を商品化することは出来ませんでした。

 

■再来島のきっかけは

次に来島するきっかけとなったのは、水産加工冷凍施設の機材選定や運営についての相談でした。最初は加工技術の指導ができないかという話だったんですが、実際に施設を運営する方向へ話が進んでいきました。当初は松浦商店の営業所として知夫へ進出する話もありました。

 

■何故、知夫里島で起業しようと思ったのでしょうか

知夫里島で水揚される素晴らしい魚介類に感動しました。とにかく魚体が大きい。それは、獲る人が少ないということが大きな要因でしょうが、魚体が大きいということはそれだけ付加価値がつきます。私は日本全国の様々な市場に足を運び、多種多様な魚を見てきました。全ての魚種とは言いませんが、知夫里の魚は本当に素晴らしいと思っています。

それから知夫の漁師さんの想いや姿勢に共感しました。話をすると、皆悔しそうなんです。輸送費がかかる。鮮度が落ちる。せっかくいい品質のものを獲ってきてもそれを届けられない。安く買い叩かれる悔しさ。いい仕事を認められない職人の想いを感じました。

 

■社名を「知夫里水産」にされた理由は

「知夫里」の名前を日本だけでなく、世界に発信していきたい想いを込めました。世界にというのは大げさに言っているのではなく、すでにタイ(バンコク)に法人を設立して海外輸出の拠点を設けています。

 

水産加工場

 

 

■加工場の機能について教えてください

ここからは専門的な話で分かりにくいかもしれませんが、ご承知おきくださいませ。

加工場の設備は、素材の持つ本来の美味しさの追求と食の安全を両立させる為に厳選しました。急速冷凍機や高圧滅菌釜、蒸気釜、低温調理器、粉砕機などが主な機材になります。素材に合わせて、冷却海水や微酸性電解水など、5種類の水を使い分けられるようにしました。多様な魚種を利用できるように、常温商品から冷凍商品まで製造できる機材を購入しています。

弊社の加工技術は、農林水産大臣賞や水産庁長官賞などの賞を55以上獲得した松浦商店の加工技術をベースに作り上げたものです。そのベースに最新鋭の機材が加わるので、今から期待が膨らみます。

今年の6月から食品衛生基本法が改正されて、HACCPの導入が義務づけられました。本加工場においては、更に厳しい自社基準を設けて商品の製造を行います。そのような考えに至ったのも、2019年に開かれたG20大阪サミット(懇親会)での食材提供や、同年10月に開催された「即位の礼」の晩餐会にて、世界のVIP600名にふぐの燻製を提供した経験からです。このような場面では、美味しさは当然のことながら極めて高度な食の安全性が求められます。特に晩餐会の時など、食中毒や食品事故があったらどうしよう、と3日くらい胃が痛くなったのを覚えております。そのような晴れ舞台にいつお声がかかっても良いように、万全の準備で臨みたいと考えています。

 

長尾

 

 

■どのような商品を販売されるのですか

鮮魚の仕立て、燻製、干物がメインです。お土産品や贈答品、災害時に備えた保存食、冷凍加工品などを製造する予定です。将来的には、魚のアラや未利用魚を生かし、猫のご飯(ペットフード)の販売も手がけていきたいです。

 

■求められる業種は何ですか

これまで知夫里島で水揚げされてきた魚介類全般です。消費の動向を見ながら、必要な魚種を特定していきます。その中でも今年度、特にほしい魚種はヒラメ、シロギス、マサバ、フグ類、イサキ、マダイ、レンコダイ、トビウオ、アカカマス、マアナゴ、ケンサキイカ、コシナガマグロ、ハガツオ、ソウダガツオ(イモガツオ)、ブリ(マルゴ)、ヒラマサ、マアジ、イワシ類、アワビ、サザエ、とにかく多種多様です。

 

■漁業者とどのように連携していきますか

知夫村にはセリがなく、漁協から加工場までの距離も短いので、水揚された魚介類をいち早く手に入れる環境こそが最大のメリットです。また、漁師さんとの距離が近いので、お互いの要求を話し合えるのも大きな魅力の一つです。漁師さんが命がけで獲ってきた魚介類に、更なる付加価値を付けて出荷し、共に発展できるように努力してまいります。

 

 

加工場前

 

■仲買と小売り販売について教えてください

仲買権を取得して漁協に水揚された魚介類を購入します。販路はこれまで、高級なホテルやレストランなど、業務用の販売を主軸に行なってきましたが、個食が進む昨今、一般消費者向けの商品も視野に入れ販売していく予定です。

 

■販路の見込みや今後の展開はいかがですか

松浦商店ではホテルニューオータニ、銀座神谷、アル・ケッチァーノなど(世界の料理人1000人(日本からは11人)に選出された奥田政行シェフの店)に商品を提供しています。デパート関係では、松坂屋、大丸に販路があり、ギフトなどの商材等を提供していました。これらの販路を今後は、知夫里水産として展開していきます。また、20198月には輸出が出来るよう、タイ(バンコク)に会社を設立しました。これまでの実績を基に国内外に販路を広めていく予定です。

 

 ■水産以外に島の資源で活用できるものは?

知夫里島を更にブランド化していくために、知夫村で自生している樹木を燻製チップとして、使用したいです。また、チップ用の樹木を植樹するための土地を探しております。植樹をして、山をつくることで海も豊かになる。環境保全につながると考えています。島の皆さまはもちろん、島外にいらっしゃる知夫にかかわりの深い方々もぜひ、ご協力のほど、よろしくお願い致します。

 

 

仁夫里湾

 

 

■知夫とどのように関わっていきたいですか

知夫里島の素晴らしい食材に更なる付加価値を付け、「知夫里島」自体がブランドとなるように励んで参ります。そういった努力により、知夫村の皆さまに恩返しをしていきたいと考えております。

 

 

■知夫を一言で表すと

 

「風光明媚」 その一言に尽きます。

 

 

大頭

 

 

 

 

 

 

 プロフィール

知夫里水産株式会社 代表取締役社長 佐藤さとう

2006年  株式会社アンジェリケ 設立

2010年  株式会社エスタンシア 設立

2016年 有限会社松浦商店取締役 就任

2020年   知夫里水産株式会社 設立

2020年7月      知夫村へ 移住

加工施設建設が進む中、稼働準備と営業、販路拡大のために日々奔走

 

佐藤氏2

 

 最高の魚を調達するため、現在も自らの足で市場に赴き、なるべく自らの目で魚を選定している。「素材に勝るものはなし」をモットーに、最高の魚を手に入れ、最高の血抜き(処理)を施し、最高の鮮度を保った上で、お客様に提供することを日夜考えている。

 

※この記事は令和3年6月に入稿されています